香川県の直島にあるベネッセハウスミュージアムに不思議な階段がある。
建物は安藤忠雄の設計によるものだが、その階段を昇って行くと上の階のどこかの部屋につながることもなくコンクリートの壁に突き当たる。
階段としてての本来の機能的な役割は果たしていないものである。
というよりはむしろ第一感として「折角ここまで昇ったのに」というガッカリ感というか絶望感を生むための装置のようにも思える。
しかし階段を登り切ったその場所には天窓が設えられており、天気の良い日には穏やかな日差しが差し込む。
その時その先にある壁は人生の大きな壁と言えば大袈裟かもしれないが、日常のふとした上手くいかないことに対してそこで諦めるのか何らかの工夫や努力をしてその先に進むのかを問うてくるようである。
設計者の真意は分からないが、ただのアソビ心というよりはもう少し深いメッセージがあることを想わせられる装置としてそこに在る。
6stepsの階段を観ているとちょうどその階段のことを思い出した。
その階段は壁には突き当たらないが、昇りきったらその先に歩いて進むことができない。
6段を昇ってそこに立ち尽くすダンサーはちょうど同じようなことを思うのかもしれない。
そんなことを考えると、宙へと続くその階段はどことなく人生の滑走路のように想えたりもする。